ちょこっと妖精学 天体

星々についての民話、伝承は世界各地に散らばっています。
ですが、アイルランドの妖精譚に限って言えば、それほど多くはないようです。
彼らの生活に暦が関わっていること、彼らの源流であるいにしえの神々や、そのモデルとなった先住民族たちは、確かに天体の知識が豊富だったようですが、それは星座というよりも太陽と月に関わる事が主だったようです。
正午と満月。これらは日月の力が最も強まることもあり、妖精たちの姿が良く見られると言われています。
とりわけ正午の太陽の光で目が眩みそうなとき、彼らの姿が見えるとか。果たして。

Margaret Tarrant

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 天体 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 落とし物

妖精たちがなにかを忘れてゆく、ということは時々あるようです。
ある民話では、彼らが踊っていたところに出会した男がいました。
もちろん妖精たちは掻き消えてしまったのですが、そこには小さな金の指輪が。
男はきっと彼らの物だと思い、それから妖精を探す様になりました。
やっとの事で彼らと行き会えた彼に、指輪の持ち主は喜んで
「なにか1つ願いを叶えてやろう」と持ちかけます。
男が考えて出した答えは「あなたたちが踊っていたあの曲を教えて欲しい」
それこそが今でもアイルランドで演奏されている「The Gold Ring」という曲なのです。

Elsa Beskow

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 落とし物 はコメントを受け付けていません

資料と現地

こんな事を言える立場ではないし、ただの語り手であることを承知で書くのですが。
例えば、本で纏められた資料や物語で「Aという妖精は『1』である」とあったとします。
けれど現地に行くと「Aは2」であったり、そもそも「Aは存在していないかBである」という場合がままあります。
こういう時、僕は例え資料が通説となっていても、現地の方たちの言葉を信じます。
誤解されそうですが、標本より生きている方が大事なんですね。
もちろんそれは資料を大事にした上でのお話なのは言うまでもありませんが。

そんな僕が、琵琶語りのコタロウさんと共演します。
お申し込みお問合せはこちらから〜

カテゴリー: 由無し事 | 資料と現地 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 妖精郷探訪

妖精たちの国。妖精郷を訪れた人たちの話はたくさん伝わっています。
それらは瞑想の中で、心の中で、というものではなく、事実として、物理的に訪れる話なのです。
こは見たことのない豪華な屋敷があり、味わったことのない美酒佳肴が用意されています。
もちろんそれらには、「現世に戻りたければ」手を付けても食べてもいけません。
その辺りは、伊弉冉と伊弉諾の黄泉比良坂でのやりとり
「もう私は黄泉の国のものを食べてしまったので戻れません」
というのにとても良く似ています。
さて、異界の食べ物はどんな味がするのでしょうか。
ペルセポネは、ザクロを食べてしまったのでしたっけ。

Dante Gabriel Rossetti

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 妖精郷探訪 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 湖底

妖精郷の場所。それに当たるのは妖精砦の中、妖精塚の下(といってもそれは物理的に中ではなく、そこから通じる異界なのですが)ですが、次いで多いのは波の底、湖の水面の下です。
良くあるのは、漁師が舟を漕ぎ出し沖に出ると、急に凪いで水面が穏やかになる。
はて? と覗き込むと、湖底がまるで地上のように見える。
水草は牧草に、魚は空を飛ぶ鳥に。
そういう時に限って、妖精たち(もしくは今は妖精になった人たち)の住む町や城が見えるそうです。

Harold Gaze

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 湖底 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 天使

天使と妖精。一見、関わり合いがなさそうですが、その実密接に関係しています。
例えばアイルランドでは、妖精はルシファーと共に堕天した天使たちで、天に帰れるほど良くもなく、地獄に堕ちるほど悪くもなかった為、最後の審判の日まで地上に止まり続けていると言われています。
また昨今のニューエイジ哲学では、人を導く天使とは別に、自然界の諸力を滞りなく循環させる為の自然界の天使だという説も。
果たしてどれが正しいのか、それともどれも正しいのか分かりませんが、どちらにしろ、彼らは私達のすぐ傍にいるのでしょうね。
画像はアイルランドの守護聖人ブリジットを描いたものです。

John Duncan

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 天使 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 花びらの斑点

妖精たちが好きな花は俯き加減で咲くものが多いのよ。
というお話を土地の人から伺ったことがあります。
確かにブルーベルやジギタリス(キツネノテブクロ)、カウスリップ(黄花九輪桜)などは俯き加減で咲いています。
それらには大抵「妖精のベッド」「妖精のスリッパ」などと彼らに纏わる別名がつけられています。また斑点がある花が多く、それらは彼らの足跡とされました。
またサンザシなども俯き加減では咲きませんが、やはの花弁の奥に斑点のような模様があったりしますね。

Margaret W. Tarrant

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 花びらの斑点 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 英雄妖精2

英雄妖精の多くには、様々な使命があると言います。
その1つが、妖精郷に渡る前、守護、支配していた土地、国に危機が及んだなら、押っ取り刀で戻り、それを救うというものです。
ですが、その救国にも様々な鍵、前提となる条件があるようです。
例えば、アイルランド南東部の妖精王であるフイッジェラルド伯は、ムラマストの墳墓に眠ると言います。そして彼は、ハロウィンの夜、家来と共にその墳墓を巡るそうです。
彼らが乗る妖精馬が履く銀の蹄鉄が、猫の耳ほど薄くなったらば、彼らはこの世に戻ってくると言います。
さて、いつになるのでしょうか。

Sir Edward Coley Burne-Jones

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 英雄妖精2 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 英雄妖精

妖精には様々なタイプがいます。例えば祖霊が妖精化したもの。樹木や泉など自然霊が形を得たモノ。
その中で、日本人からするとちょっと特殊だなーと思うのが「英雄妖精」と呼ばれる人たち。これは神話や伝説の英雄が妖精の一員として認識されている例です。
日本だと家康公とか義経など神様とかになっている場合が多いのですが、アイルランドだと、妖精郷に遊び、生前治めていた国や領地に事あらば戻ってくる救世主として認識されています。有名なのはお馴染みアーサー王やアイルランドのヘラクレス、フィンマクール。
他にも、湖の王となった名君などその土地土地に英雄妖精がいるようです。
彼らは永遠の若さをもって馬を駆り、今でもその土地の真の王なのです。

Ivan Bilibin

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 英雄妖精 はコメントを受け付けていません

ちょこっと妖精学 バンシー

泣き妖精バンシーは靴屋妖精レプラコーンと並んでアイルランドを代表する妖精です。
とはいえ、死を知らせるという性質から、忌避されがちですが、実は今でも目撃例が絶えない妖精でもあります。
彼女の歴史は古く17世紀には記録として残っているそうです。
そこには「白い服を着た、髪の赤い、幽霊のように顔の青ざめた女」と書かれ、聞いたこともないような声で「馬」と三度叫んだそうです。
そして翌日、その家の主が亡くなったと。
確かに、フィールドワークをしていても、バンシーの目撃例はよく聞かれます。
「俺のばあさんが亡くなるときにその叫び声を聞いた」
「病院で看護してるときに、視た」などなど。
死と生、両方に立ち会い、運命を左右する存在が妖精の本質であるとすれば、彼女の出番は他の妖精より多いのかも知れませんね。

Draper Herbert James

カテゴリー: ちょことっと妖精学 | ちょこっと妖精学 バンシー はコメントを受け付けていません