妖精たちは何かにつけて人間に頼ろうとします。
これを「妖精の依存」なんて呼び方をしてますが、あちらの世界にはなくて、こちらには溢れてるものっていうのがあるんでしょうね。
どちらにせよ、彼らを助けてその見返りに何かをくれるといったら注意が必要。
妖精の宝物はそれはそれは素晴らしく、人間の欲をかき立てる物ばかりなのです。
それもそのはず、彼らは世界中の富を手にしているのですから。
財布から溢れる金貨は使っても使っても目減りしませんし、上等の絹のショールは本当に肌触りが良くてずっと触れていたいし、腰帯は上等の物で、キラキラと輝いています。
けれど、欲を出してそれを手にしたらもう駄目です。
すべては災いの始まりで、身を滅ぼしたり、家が火事になったりと大変な事になるのです。
えー、お礼なのに?
そうなのです。お礼だからこそ、欲を出さず、過不足なく頂いて、それ以上の物は辞退しなくてはなりません。
あるお医者さんは、治療の報酬として、山ほどの金貨を送られることになりましたが、正当な対価しか受け取りませんでした。
無事家に帰ってみると、そのお金の中には金の指輪が。しかもお医者さんのイニシャルが彫られていたそうです。
もちろんそれは慎ましいお医者さんに対する妖精王からの贈り物だったのです。