人にとって植物は建材に食料に、そして燃料として大変有用で、切っても切れない縁があります。それは伝説や民話にもよく登場するところからも伺えます。
例えばハンノキ。水辺を好む特性から水の精霊の木などと言われています。
面白いことに、シューベルトの歌曲として有名なゲーテの「魔王」。
このお話は、もともとゲーテの友人であったヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの『民謡集』からヒントを得ているそうです。
ヨハンの民謡集から取り上げられたのは『魔王の娘』という詩。
内容としては、魔王の娘が、青年を誘惑しようとしましたが、結婚式を控えた青年は、その誘いを断ってしまうのです。
怒った魔王の娘は、青年に呪いの一撃を加え、青年は命を落とす……。
原題では『ハンノキの王の娘』となっているのです。
しかしこれはヨハンがデンマーク語から訳したときの誤りと言われていて、デンマーク語では『妖精の一撃』と言ったそうです。妖精とハンノキの綴りが似ていたから起こったと言われていますが、ドイツなど欧州にある木に精霊が宿るという考え方をなぞった敢えての変更という見方もあるそうです。
どちらにしろ、木には某かの精が宿り、それは得体の知れず、時に人に不幸をもたらすことが有るという伝承がベースになっているようです。
Carl Gottlieb Peschel