ちょこっと妖精学 竪琴

妖精たちの楽器、彼らが好む音と言えば、様々あります。
例えば素晴らしい笛吹きは、その腕を見込まれて妖精郷に連れ去られましたし、フィドル(バイオリン)弾きも、同じように妖精から演奏を依頼されました。
とは言え、一般的にはやはり竪琴をイメージされる事が多いようです。

とりわけそれは、人魚の絵画に多く見られます。
確かに、人魚や水精が竪琴を弾くという構図はとてもロマンチックですね。

確かに、ドイツの水精ネックは、湖面に座り、黄金の竪琴を奏でると言います。
彼の演奏は素晴らしく、周りの自然に影響を与えるほどだとされています。
もし彼から、竪琴の手解きを受けたければ、黒羊を一頭差し出せば良いとか。

また竪琴には、色んな意味が含まれているそうで、弦を張るという構造は、天地を繋ぐ象徴だとも言われているそう。
ある説にでは、初期の西ヨーロッパで作られたハープのおおよそがヤナギで作られていたといいます。ヤナギは女神や、月の周期、豊穣、魔法に関連づけられた木で、そこから生み出された楽器は同時に魔法的な音を奏でるというのです。

そして人魚など、水に関係する妖精の多くが音楽を奏でたり、歌を歌うのは、河の女神であるサラスバティ(弁才天)が、そのせせらぎの音から、音楽や淀みなく流れる、つまり弁舌も淀みがないと発展した言ったのと同じだと言います。

他にも、バラッドなどの民衆物語では、人でなしの姉に殺された妹の髪を弦にした竪琴が登場します。その竪琴は、姉がどんなに酷く、そしてどうんな方法で自分を殺したかをひとりでに演奏し、歌ったそう。なんとも恐ろしいですね。

似た話で、アイルランド版「王さまの耳はロバの耳」では散髪屋は、穴を掘って叫ぶのではなく、ヤナギの木(ここでも!)に「王さまの耳はロバの耳なんだよ」と囁きかけました。
そして王さま付の竪琴弾きが、そのヤナギで竪琴を作ったところ、竪琴はひとりでに「王さまの耳はロバの耳」と歌い出したそうです。

このように、竪琴と妖精、そして魔法との関連性は挙げだしたら切りがありませんし、彼らの関係を明らかにする物語は沢山あります。

ですが、その中でも大きな要素として、アイルランドとの関係性があるような気がします。
世界広しといえども、楽器を国章にしているのはアイルランドだけ。
もちろんそれは竪琴です。そしてアイルランドと言えば妖精の国。
この2つの要素は、画家や作家のインスピレーションを強く刺激するのでしょうね。

蛇足
アイルランドはアイルランド語でエリン(エーレ)。
そしてハープはクローシャッハ、クリッツ。
どちらも女性名詞で、エリンは女神の名前で、アイルランドを擬人化して描く場合、女神であったり、老婆だとされています。

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