ちょこっと妖精学 閉じた環

ハロウィンを過ぎ、暗い季節が始まりました。
これから5月1日のベルティネまで邪妖精が幅を利かせる訳ですが、やはり「攫われる」事に関して言えば、ハロウィンの夜がもっとも危険のようです。
では、攫われた人を取り返す術はないのでしょうか?

これに関して言えば、大まかな方法はふたつ。

ひとつは、攫われた本人が、一時的にしろこちら側に戻ってきて、助けを請う方法。
これには様々な条件があり、まず攫われた人が妖精たちの食べ物を口にしていないことが絶対条件となります。どういう場合であれ、一度でも彼ら背の食べ物を口にしてしまえば、彼らの許可なく、自発的に戻ってくることはでは出来ないのです。
運良く口にしていない場合に限り、戻ってこられるチャンスがあるのです。
それは彼らが遊行、ないしは妖精砦から妖精砦に移動しているときに、乗っている馬から引き引きずり下ろすというもの。
些か乱暴のようですが、彼らが村境の十字路にさしかかったときがチャンス。
うまく引きずり下ろせれば成功ですが、少しでも鞍や鐙に体が引っかかってしまうと不成功。霧散する彼らと共に被害者は消えてしまい、二度と助けることは出来ません。

もうひとつは、攫われた場所に戻ってみるというもの。
これは単純に戻れば良いのではなく、攫われた理由が、彼らの踊りの輪の中に入った、という被害者が自分から彼らの中に参加した場合が多いようです。
これもまたただ攫われた場所に戻れば良いのではなく、来年の同じ日という条件付き。
その時になると、1年経っても彼らと踊り続けている被害者を見つけられるのです。
そして決して彼らの踊りの輪の中に入らずに、引っ張り出せれば成功。
ただ、成功しても、爪先が磨り減っていたり、極度に衰弱していたりするそうです。

このふたつの方法。もうお気づきかも知れませんが、遊行する彼らに出会うにしろ、攫われた場所に戻ってみるにしろ、どちらも彼らの祝祭日であるハロウィンやベルティネに紐付けられているのです。

彼らの世界と繋がることの出来るふたつの祝祭日。
被害者を助けるには、その日まで待つことが1番の方法なのかも知れません。

Gustave Doré

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