妖精たちに貨幣経済があるのか、と言われれば正確なところは分かりません。
ただ、靴屋妖精レプラコーンが金貨を貯めていたり、アイルランドの英雄妖精たちがコインを持っていたりするので「お金」という概念があるのは確かなようです。
ただ、人間のようにそれを目当てにしたりとかはあまりないようで、どちらかというと嗜好品の類いのような感じです。
中にはお金を貸す、渡すということはあるようですが、それももっぱら人間相手です。
ある湖の中に城を構える妖精王は、自らの領地に住む農夫が、地代を払えずに困っていると知り、彼に小袋いっぱいの金貨を渡します。喜んだ農夫はそのお金で地代を払い、それでも余ったお金で土地を買い取りました。
しかし翌日、強突く張りの地主が見てみると金貨は全てジンジャーブレッドクッキーに変わっていたそうです。もちろん地主は怒ったけれど後の祭り。証文はしっかり取り交わされていたのでした。
アイルランド南西部ケリー県に伝わるお話です。
Heinrich Vogeler